🔍 『天津祝詞あまつのりと』の解説



今回は、神秘に満ちた『天津祝詞あまつのりと』についてのお話です。


天津祝詞あまつのりと

高天原にたかあまはらに 神留まり坐すかむずまります
神漏岐・神漏美のかむろぎかむろみの
命以てみこともちて
皇御祖神すめみおやかむ
伊弉諾大神イザナギのおおかみ
筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原につくしのひむかのたちばなの・おどのあはぎはらに
御禊祓みそぎはらひ
賜ひし時に生ませるたまいしときにあれませる
祓戸大神等はらいどのおおかみたち
諸々の枉事罪穢をもろもろのまがごとつみけがれを
祓ひ給へ清め給へとはらいたまえきよめたまえと
申す事の由をもうすことのよしを
天津神、国津神、八百万の神等共にあまつかみくにつかみやおよろずのかみたちともに
聞し召せと恐み恐み申すきこしめせとかしこみかしこみもまをす



この言葉の響きを見ると、なんだか 強力な力 を秘めた呪文のように感じられます。
実際、神々への祈りや願いを込めたこの祝詞は、古くから我が国の伝統として大切に守られてきました。

しかし、その現代語訳や祝詞の背景については、今も多くの謎に包まれています。

この神秘的な側面こそが、『天津祝詞』の魅力の一つとも言えるのかもしれませんが、世の中で信じられているイメージって、本当に正しいのでしょうか?

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今回は、そんな『天津祝詞』の謎を解き明かすべく、私自身が分析してみました。

この祝詞が、古代の日本でどのように使われ、どのような意味を持ってきたのか?

実際に「原文を訳す」ところから始めて、その上で『神話』や『古語拾遺』とも突きあわせながら、中身を分析してみたのですが……


今から言う結果は、「予想外の答え」が飛び出しますので、心の準備をお願いします。


天津祝詞あまつのりと】(原文と訳)

高天原にたかあまはらに 神留まり坐すかむずまります
神漏岐・神漏美かむろぎかむろみ命以てみこともちて

皇御祖神すめみおやかむ
伊弉諾大神イザナギのおおかみ


『高天原』にいてはる
神漏岐かむろぎ』と『神漏美かむろみ』の命を受けて
 皇族の祖神、たら言う
伊弉諾イザナギ神』が地上に降りた後の話なんやねんけどな

筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原につくしのひむかのたちばなの・おどのあはぎはらに
御禊祓みそぎはらひ 賜ひし時に生ませるたまいしときにあれませる
祓戸大神等はらいどのおおかみたち


なんや揉め事あって黄泉よみの国とか)

筑紫つくし日向ひむかたちばな小戸おど阿波岐原あはぎはら
祓いと清めしたとき生まれたんが
祓戸大神はらえどのおおかみたち なんや。
(神話では、日神・月神・荒神)

諸々の枉事・罪穢をもろもろのまがごとつみけがれを
祓ひ給へ清め給へはらいたまえきよめたまえ

申す事の由をもうすことのよしを


そんで今から
「アンタの宮遣えでの失敗や、日常の罪穢れを
大王様が〝水に流して〟許しはる」
〜って
意味のうた、読み上げるからな

天津神、国津神、八百万の神等共にあまつかみくにつかみやおよろずのかみたちともに
聞し召せと恐み恐み申すきこしめせとかしこみかしこみもまをす


偉大なる大王様あまつかみの前にお集まりの

国掴みくにつかみ の皆様(特権階級の臣官)
大勢お集まりやおよろずの皆様…(その他の貴族・招待客たち)

これより特別な言葉、つつしんで申し上げますねん。


テーブルデザインピンク2行 あれ? なんかイメージしてたのと違う。 これってもしかして〝儀式の説明〟なのですか?
天津祝詞は、「大祓詞」奏上中に、以下のタイミングで唱えられるのですが

天津 金木を 本打ち切りあまつかなぎをもとうちきり 末 打ち断ちてすえうちたちて 千座の置座に 置足はしてちくらのおきくらに おきたらわして 天津菅麻を 本刈り断ちあまつすがそをもとかりたち 末刈り切りてすえかりきりて八針に 取裂きてやはりに とりさきて 天津祝詞の 太祝詞事を宣れあまつのりとの ふとのりとごとをのれ

この一節は、目の前に並んだ儀式の描写。 「神聖な工具で切ってきた木を、皆さんの目の前の神聖な台に置いて、榊の枝も整えて飾ってあります。そしてこれから、天津祝詞という、特別な祝詞を唱えますよ!」 という意味です。 …… ここでいったん『大祓詞』が中断し、齋部いんべ氏が『天津祝詞』を歌い上げる。 それを受けて、『大祓詞』の後半部分が始まるのです。

……此く宣らばかくのらば 天津神は 天の磐戸を押披きてあまつかみは あまのいわとをおしひらきて 天の八重雲をあまのやえぐもを 伊頭の千別に千別ていずのちわけにちわけて 聞食さむきこしめさむ

このように『天津祝詞』を宣った後はいよいよ 天津神である大王様が、玉座の垂れ幕をパッと押し開き、姿を現して皆の願いを聞く準備に入られますよ。 いよいよ 罪が許される瞬間 が近づいてきますよと……   ・    ・ 

📺 天津祝詞は独立した祝詞ではなかった

天津祝詞は、『大祓詞』とセットで出てきて、実は独立した祝詞ではなかったのではないか?
……そのような 鋭い疑問 は、今までも何人かの学者は気づいていたようです。 しかし、そこから先は『推理力』の世界になるので、全ては見抜けなかったようで、今までの先入観からなのか、その鋭い疑問にたどり着けた方々ですら、
天津祝詞は『大祓詞』を強化するための呪文ではないか? この部分は象徴的な意味を持ち、神々が人間の祈りや願いを積極的に聞き入れるという、意味合いを持つのではないか?
このように解釈されていたようです。 しかし、そういった先入観を一切外して『天津祝詞』も『大祓詞』も、自分で原文から訳し、その中身を分析してみると、想像とは全く違うことが書かれていたわけです。 私も、自分で訳しながら驚きました。 見て分かるように、天津祝詞は、単体で効力を発揮するものではなかった。 元々これは『大祓詞』の中心部に組み込むものとして作られ、『大祓詞』の演出をよりカッコヨク見せるために、真ん中に挟んでいただけ。 天津祝詞は『大祓の儀』の美しさをより際立たせるものだった……。   ・    ・ 

📼 祓戸大神等はらいどのおおかみたちの謎

  【かんたんな古事記の流れ】

昔々、イザナギ様とイザナミ様という神様が、高天原の神様(カムロギ・カムロミ)の命を受けて地上に降り、『天の浮橋』から天の日矛で『おのころ島』をはじめとする大地を作りました。 この島で、彼らは夫婦となったのですが、多くの島々や神々を生み出したときに、火の神のヤケドで妻は亡くなってしまいました。 黄泉の国(死者の国)へと旅立った妻を追って、イザナギ様も黄泉の国へ行きますが、ゾンビに追いかけられ、地上に逃げ帰ります。 戻ったイザナギ様は、川で禊ぎ(身を清める)を行いました。 場所は、筑紫地方の日向国・小戸の阿波岐原です。 この禊ぎのときに、彼の身から3人の神々が生まれました。左目から太陽神アマテラス。右目から月神ツクヨミ。鼻から荒神スサノオです。

  ・    ・  ここからは、『大祓詞』・『天津祝詞』の中の 謎の神様 についての解説です。

筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原につくしのひむかのたちばなの・おどのあはぎはらに 御禊祓みそぎはらひ 賜ひし時に生ませるたまいしときにあれませる 祓戸大神等はらいどのおおかみたち

  ・    ・  この部分は『古事記』の中の、天照大神の誕生シーンとリンクしています。 ただ、そこで生み出された神名が一致しない。 本来なら神名が一致するはずなのですが、『大祓詞』・『天津祝詞』側では、ちょっと改変されてまして……
【大祓詞】 ❁ 瀬織津せおりつ姫 ❁ 速開都はやあきつ姫 ❁ 気吹戸主いぶきどぬし ❁ 速佐須良はやさすら
このようになってます。 しかも、この 祓戸大神等はらいどのおおかみたち のうち、速開都はやあきつ姫を除く3神は、『古事記』の中では登場しない、架空の神様 なのです。 『大祓の儀』のために、ゴロを合わせて急遽作成(引用)された神名。
山の〝息吹の主イブキドヌシ〟がビューと神風を吹かすと? (罪を許したり、計画を許可したりの声を発する)背折り〟の重荷が外れセオリツヒメ…  今すぐ道が〝早開きつハヤアキツヒメ〟になり… 〝流離い(さすらい)ハヤサスラヒメ〟の浮遊状態が今すぐ解決される! この大祓の儀で!
こういう意図で、『大祓詞』では神様の名前が作られてます。   ・    ・  もっと言うと、ここで言う『神漏岐・神漏美かむろぎかむろみ』の字も、実は間違っているのですよ。 正しい漢字と、その由来は? 【漢字の訂正】
✖ 神漏岐かむろぎ …… ⭕ 神路岐かむろぎ

(天孫降臨の時の天の八衢あめのやちまたのこと)

✖ 神漏美かむろみ …… ⭕ 神路見かむろみ

天の八衢あめのやちまたから下界を見た時のこと)

おかしいと思ったでしょう? 神様の名前っぽくない発音なので、あの、カムロギ・カムロミとは一体何だ? と…… この発音の由来は、
『天孫』邇邇藝命ニニギノミコト が、天からの指令を受けて『天の浮橋』を渡って地に降りることになった。 彼は『天の八つの分岐路かむろぎ』から『地上を見下ろしかむろみ』、当初は出雲へ向かおうとした。 ところが途中で猿田彦という神に出会い、高千穂へ目的地変更になった。
この部分から来ているのです。
  💻 関連LINK……『天孫』邇邇芸命
ちなみに、イザナギという名前も、 本当は神様の名前ではなく〝誘凪いざなぎ(イザ、凪に向かう!)から来ています。
  💻 関連LINK……『カタカムナ』第13句
古代の『伝説』や『神話』などは、従来の解釈をそのまま信じてしまうと、なかなか矛盾点に気づかないものです。 鋭く、真実を見抜く目を持たないと、今までの解釈をコロッと信じてしまう…… HOMEカタカムナであなたの人生は劇的に変わる!!
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